お尻から出る粘液の正体とは
お尻か出る粘液は、腸の粘膜から分泌されるたんぱく質の一種で、腸内で便をスムーズに移動させる役割があります。便にはゼリー状の粘液が含まれることがありますが、微量であり、肉眼では確認できないことが多いです。しかし、下痢や消化管に炎症が起こっているときなどは、腸の粘膜が傷ついて剥がれ、通常よりも多くの粘液が出るため、粘液便が排泄されることがあります。粘液便とは粘液だけが排泄される場合や、肉眼で見ても明らかに粘液が混じっているとわかる便のことをいいます。
お尻から粘液が出たら粘液便?粘血便?
粘液便
粘液便とは、粘液のみの排泄や肉眼で明らかに判明できる程度の量の粘液を含む便のことをいいます。通常、便には必ず粘液が付着していますが、肉眼で見てベタベタするほどの粘液が便に付着している場合は、何らかの原因によって粘液が過剰に分泌していると考えられます。例えば、腸管内に傷ができたときなどは、その保護のために粘液が多く分泌されます。粘液便と似た便に粘血便がありますが、粘血便は粘液便の中に血液が付着している便のことをいいます。粘血便は必ずしも肉眼で血液が確認できるわけではなく、粘液便だと思っていたら、実は粘血便だったということもあるので注意が必要です。
粘血便
粘血便とは、ベタベタした粘液に加えて、血液が付着している便のことをいいます。粘血便は、消化管のどこかで出血があることをあらわすため、粘液便より注意が必要です。粘血便に含まれる血液の色によって出血箇所が推定でき、血液の色が鮮やかであれば肛門に近い消化管、血液の色が黒っぽい場合は胃などの肛門から遠い消化管で出血が起こっていると考えられます。粘血便を引き起こす病気は、大腸がんや潰瘍性大腸炎、クローン病、感染性腸炎、胃がん、胃・十二指腸潰瘍などがあります。
このような症状はありませんか?
- ベタベタした便が出た
- イチゴジャムのような便が出た
- 血液が付いた感じの便が出た
- 便潜血検査で陽性を指摘された
粘液便の色(心配のいらない粘液便と注意の必要な粘液便)
粘液便は、消化不良によって引き起こされることがあるため、暴飲暴食をした日の翌日などに粘液便がでることがあります。しかし、消化不良を原因とする粘液便は、胃腸の調子が回復すると治るため、あまり心配する必要はありません。一方で、大量の粘液が付着した粘液便や、出血を伴う粘血便は、消化管に異常が起こっている可能性があるため、注意が必要です。
大腸が傷つく原因
大腸を傷つける原因としては、下記のようなことが挙げられます。
粘液便の色が白っぽかったり、ピンク色や緑色、赤色をしている場合は注意が必要です。また、腸管に炎症が起こっている場合には、粘液便が出る可能性が高くなります。
白色の粘液便が出た
白色の粘液便は、食あたりや水あたり、消化不良、冷え、ストレスなどによって下痢を起こしているときによく出ます。過度に心配する必要はありませんが、粘液の量が多かったり、粘液便が長い期間続く、粘液便に血液が混じるなどの症状がある場合は、下記のような病気が潜んでいることがあるので必ず受診しましょう。
潰瘍性大腸炎(軽症)
軽症の潰瘍性大腸炎を引き起こすと、腸管の炎症部に集まった白血球が粘液と混じり、白っぽい粘液便となって排出されます。炎症によって粘液の分泌は増えますが、血液が混じることは少ないです。
薬剤性腸炎
薬剤性腸炎とは抗生物質や鎮痛剤などの薬剤の服用によって引き起こされる大腸炎のことをいいます。薬剤性腸炎になると、炎症が起きた箇所に集まった白血球が粘液と混じり、白っぽい粘液便となって排出されることがあります。薬の服用を中止すれば粘液便は止まります。なお、薬の服用の中止は医師の指示のもと行ってください。
ピンク色の粘液便が出た
ピンク色の粘液便は、肛門付近の直腸が傷ついて、粘液に少量の血液が混じることで引き起こされていることが多いです。大腸の傷が治ると、ピンク色の粘液便は出なくなりますが、便秘などによって硬い便が繰り返されている場合は、ピンク色の粘液便が繰り返されやすいです。腸内環境を整えて、自然な便を出せるようにすると症状が改善されます。ただし、症状が続く場合は、下記のような病気の可能性があります。
いぼ痔
いぼ痔(内痔核)が起こると、いぼ痔が便と擦れて出血し、血液が粘液と混じることでピンク色の粘液便が出ることがあります。内痔核はピンク色の粘液便どころか、便器が真っ赤になるほどの出血を起こすこともあります。
緑色の粘液便が出た
緑色の粘液便は、粘液に酸化した胆汁が混じることで引き起こされます。小腸や大腸の働きが鈍くなると、胆汁の再吸収が行われなくなるため、胆汁が酸化し緑色になります。過度な心配は不要で、消化に負担のない食事を数日程度続けることで治ることが多いです。しかし、緑色の粘液便に伴って、腹痛や下痢などの症状がある場合は、ブドウ球菌感染症の可能性があります。
赤色の粘液便(粘血便)が出た
赤色の粘液便(粘血便)は、大腸の粘膜が炎症を起こし出血することで引き起こされます。何らかの病気によって引き起こされている可能性が高いです。出血が続く場合には、大腸カメラ検査などの精密検査を行う必要があります。
潰瘍性大腸炎(重症)
潰瘍性大腸炎が重症化すると、粘血便や血便が引き起こされます。ほかにも下痢や腹痛、発熱、体重減少、貧血などの症状をともないます。
クローン病
クローン病は、小腸や大腸に慢性の炎症や潰瘍を引き起こし、粘血便や血便を引き起こします。ほかにも腹痛や下痢、発熱、貧血、痔ろうなどの症状をともないます。
大腸憩室炎
大腸憩室炎とは、大腸の一部が外に押し出されてできた袋状のくぼみ(憩室)が炎症を起こす病気です。粘血便や血便を引き起こすことがあり、腹痛や吐き気、嘔吐、発熱などの症状をともないます。
大腸がん
大腸がんは初期には自覚症状がないことが多いですが、進行すると、粘血便や血便、便が細くなる、貧血などの症状を引き起こします。