クローン病とは
クローン病とは、口から肛門までの消化管のあらゆる場所で、飛び飛びに炎症や潰瘍が起こる炎症性腸疾患です。なかでも小腸と大腸を中心とする小腸末端部に炎症や潰瘍が起こりやすいとされています。クローン病が起こるはっきりとした原因はわかっておらず、遺伝子要因やウイルス感染が原因なのではないかと考えられています。治療に関しては入退院を繰り返すことが多いため、必要に応じて連携する基幹病院を紹介しています。厚生労働省の指定難病に該当している病気であるため、難病医療費助成制度を利用することで、医療費の支援が受けられます。
クローン病の症状
クローン病の症状は、主に腹痛、下痢などで、ほかにも発熱や血便、体重減少、貧血、全身の倦怠感、腹部の腫瘤などもあります。合併症として、腸から他の臓器へ穴を作ってしまう瘻孔や、腸閉塞、膿瘍、関節炎、虹彩炎、結節性紅斑、肛門部の病変などが起こることもあります。
クローン病と類似の症状がある病気
腸結核
腸結核とは、結核菌を病原とする病気で、結核菌が腸に感染することによって起こります。症状は、不屈、発熱、全身の倦怠感などが起こります。
NSAIDs潰瘍
NSAIDs潰瘍とは、非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）の副作用によって引き起こされる病気で消化管に潰瘍を起こします。胃もたれ、胃の不快感、上腹部通などの症状が起こります。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎とは、大腸や小腸の粘膜に慢性の炎症を起こす大腸の炎症性疾患です。症状は下腹部の違和感、下痢、粘血便・血便などの便異常、発熱、腹痛、体重減少、貧血などがあり、これらの症状は強くなったり弱くなったりを繰り返します。クローン病と同様に、厚生労働省の指定難病になっています。
クローン病の原因
クローン病の明確な原因はわかっていません。遺伝的な要因や、麻疹ウイルスなどの感染、腸管粘膜に炎症を引き起こす食べ物の成分、腸管内の血管の血流障害などの可能性が疑われています。また先進国での発症数が多いことから、動物性脂肪やたんぱく質の摂取量が発症リスクを高めているとも考えられています。
クローン病の検査方法
問診にて症状を確認し、血液検査で貧血がありクローン病が疑われる場合には、「大腸カメラ検査」などの画像検査を行います。検査の結果、特徴的な病変が発見された場合、クローン病と診断します。
診断のポイント
潰瘍性大腸炎との区別
クローン病に似ている疾患として、「潰瘍性大腸炎」があげられます。潰瘍性大腸炎とクローン病の違いは、潰瘍性大腸炎は直腸から連続的に炎症が起こるのに対して、クローン病は「スキップリージョン」といって飛び飛びに病変が起こり、縦走潰瘍が発生したりします。また、小腸で病変が見られるのもクローン病の特徴です。
クローン病の治療方法
クローン病は、はっきりとした原因や根本的な治療方法が明らかになっていないため、「栄養療法」「薬物療法」「外科治療」などの方法を組み合わせて、症状の抑制と改善を図ります。
栄養療法
クローン病が経腸や腸閉塞などの合併症を引き起こしている場合、静脈から必要な栄養素を投与して、クローン病の症状の抑制、改善を行います。
薬物療法
「5-アミノサリチル酸製剤」「ステロイド剤」「免疫調節薬」などを内服して、クローン病の症状の改善を図ります。「5-アミノサリチル酸製剤」「免疫調節薬」は症状が改善された場合でも、再発防止のために継続して投与します。
外科治療
クローン病が瘻孔、腸閉塞、膿瘍などの合併症を引き起こしている場合には、外科治療を行うことがあります。腸閉塞は内視鏡的治療で改善することも可能です。
瘻孔（ろうこう）
瘻孔とは、肛門内にある病変から穴が開くことで、腸管同士や腸管と皮膚がトンネル状につながる病気です。
腸閉塞
腸閉塞とは、腸管の狭窄や癒着により、腸管の内容物が詰まってしまった状態を指します。腸閉塞の治療では内視鏡によって狭窄部を拡張する治療が行われます。
膿瘍（のうよう）
膿瘍とは、膿が溜まった状態を指します。膿瘍は瘻孔によって引き起こされることがあります。
難病医療費助成制度について
「難病医療費助成制度」とは、治療方法が確立されていない難病にかかっている患者様に対して、国が医療費を助成する制度です。難病医療費助成制度の対象となると、治療にかかる費用の自己負担割合が下がったり、自己負担の上限が設けられたりするため、医療費の負担が少なくなります。難病医療費助成制度の対象となるかは、国が定める難病の重症度の基準に準じて判断され、一定以上の症状がある方が対象となります。軽症であるが、長期的な治療が必要な方は「軽症高額該当」として医療助成が受けられる場合があります。
クローン病の診断基準
主要所見
Ａ．縦走潰瘍<注１>Ｂ．敷石像
Ｃ．非乾酪性類上皮細胞肉芽腫<注２>
副所見
a．消化管の広範囲に認める不整形～類円形潰瘍またはアフタ<注３>b．特徴的な肛門病変<注４>
c．特徴的な胃•十二指腸病変<注５>
確診例
[１]主要所見のＡ又はＢを有するもの。<注６>[２]主要所見のＣと副所見のa又はbを有するもの。
[３]副所見のa、b、c全てを有するもの。
疑診例
[１]主要所見のＣと副所見のcを有するもの。[２]主要所見Ａ又はＢを有するが潰瘍性大腸炎や腸型ベーチェット病、単純性潰瘍、虚血性腸病変と鑑別できないもの。
[３]主要所見のＣのみを有するもの。<注７>
[４]副所見のいずれか２つ又は１つのみを有するもの。
<注１> 小腸の場合は、腸間膜付着側に好発する。
<注２> 連続切片作成により診断率が向上する。消化管に精通した病理医の判定が望ましい。
<注３> 典型的には縦列するが、縦列しない場合もある。
また、３ヶ月以上恒存することが必要である。
また、腸結核、腸型ベーチェット病、単純性潰瘍、NSAIDs潰瘍、感染性腸炎の除外が必要である。
<注４> 裂肛、cavitating ulcer、痔瘻、肛門周囲膿瘍、浮腫状皮垂など。Crohn病肛門病変肉眼所見アトラスを参照し、クローン病に精通した肛門病専門医による診断が望ましい。
<注５> 竹の節状外観、ノッチ様陥凹など。クローン病に精通した専門医の診断が望ましい。
<注６> 縦走潰瘍のみの場合、虚血性腸病変や潰瘍性大腸炎を除外することが必要である。敷石像のみの場合、虚血性腸病変を除外することが必要である。
<注７> 腸結核などの肉芽腫を有する炎症性疾患を除外することが必要である。
厚生労働省のものを引用
重要度分類
クローン病の重症度分類には「IOIBDスコア」という分類が使用され、各項目を1点として、2点以上の場合に医療費助成の対象となります。
IOIBDスコア
- 腹痛
- １日６回以上の下痢あるいは粘血便
- 肛門部病変
- 瘻孔
- その他の合併症（ぶどう膜炎、虹彩炎、口内炎、関節炎、皮膚症状（結節性紅斑、壊疽性膿皮症）、深部静脈血栓症等）
- 腹部腫瘤
- 体重減少
- 38℃以上の発熱
- 腹部圧痛
- ヘモグロビン10g/dL以下
厚生労働省のものを引用
軽症高額該当について
上記の「重症度分類」で軽症に該当する場合でも、長期的な治療が必要である場合は、「軽症高額該当」として医療費助成が受けられる場合があります。
対象となる方
医療助成金を申請した月から12か月前までの期間に、1か月あたりの医療費の合計が33,330円を超える月が3月以上ある場合、軽症高額該当の対象となり、医療費助成が受けられます。なお、クローン病と診断されてからまだ12か月が経過していない場合は、難病指定医が診断した月から申請月までの期間に、1か月あたりの医療費の合計が33,330円を超える月が3月以上ある場合に軽症高額該当の対象となります。
よくある質問
クローン病は治りますか？
クローン病は、発病の原因や根本的な治療方法が発見されていない病気であるので、一概に「治せる」「治せない」とは言えません。しかし、最近では効果的な生物学的製剤が開発されていて、症状を抑制しやすくなっています。
入院が必要になる場合はありますか？
重症のクローン病の場合、入院にての治療が必要になる場合があります。また瘻孔ができたり、小腸に病変があったりすると、手術が必要になる場合があります。
クローン病の薬の副作用はどのようなものがありますか？
過労やストレスはクローン病を悪化させるので、十分に睡眠をとったり、リラックスしたりして、疲れやストレスを溜めないようにしましょう。また、食事に関しては、動物性脂肪や繊維分の少ない食事を摂ることがお勧めです。