慢性胃炎と萎縮性胃炎
慢性胃炎とは
慢性胃炎とは、胃粘膜の炎症が長期にわたって持続する、あるいは繰り返し生じている状態のことを言います。胃痛や胸焼けなどの症状を起こします。ピロリ菌感染症や非ステロイド系消炎鎮痛薬などによって起こることのほか、ストレスによって発症したり、悪化したりもします。慢性胃炎が続くと、萎縮性胃炎に進行し、胃がんを発症するリスクが増加します。
萎縮性胃炎とは
萎縮性胃炎とは、慢性胃炎が長期的に続き胃の粘膜が薄く、弱くなった状態のことを言います。萎縮性胃炎は放置すると治療に時間がかかり、胃がんに進行する場合があります。
萎縮性胃炎の治療
萎縮性胃炎の治療では、ピロリ菌の除菌を主に行います。ピロリ菌の除菌には、除菌剤や胃の炎症を抑える薬を1日2回、1週間服用していただきます。なお、胃カメラ検査を使ったピロリ菌検査により、慢性胃炎と診断された場合には、2回まで保険適用で除菌治療が受けられます。
慢性胃炎と表層性胃炎、萎縮性胃炎
慢性胃炎の中で、初期の状態を「表層性胃炎」、進行した状態を「萎縮性胃炎」と呼びます。表層性胃炎では、胃の粘膜が赤く充血した状態であり、ストレスや不安、暴飲暴食などによる胃酸過多によって引き起こされることが多いです。ピロリ菌陰性の人に発生しやすいと言われており、胃に痛みが出ることがあります。通常、生活習慣や食生活を見直すことで改善を図ります。萎縮性胃炎は表層性胃炎が長期化して発症する病気で、胃の粘膜は薄くザラザラで弱い状態です。
慢性胃炎の原因
慢性胃炎は、ほとんどはピロリ菌を原因とした萎縮性胃炎ですが、そのほかにA型胃炎(自己免疫性胃炎)や非ステロイド性抗炎症薬による薬剤性胃炎があります。ピロリ菌を原因とした萎縮性胃炎は、炎症が胃の出口付近(前庭部)を中心に、胃の中心(胃体部)に広がります。A型胃炎(自己免疫性胃炎)は胃の中心(胃体部)に強い萎縮が見られ、胃の出口付近(前庭部)には萎縮が見られません。多くの場合、血液中の抗胃壁細胞抗体や抗内因子抗体などの自己抗体がみられ、ビタミンB12を吸収できないことで生じる貧血をきたす特殊な胃炎です。非ステロイド性抗炎症薬による薬剤性胃炎は肝硬変や腎不全などの病気に伴う慢性胃炎であり、栄養障害や代謝障害、血液循環障害が原因で引き起こされると考えられています。
慢性胃炎の症状
- 胃痛
- 胃の不快感(胃が重い)
- 胃もたれ(胃がムカムカする)
- 吐き気
- 嘔吐
- 食欲不振
など
慢性胃炎の治療
どうしたらいい?
慢性胃炎の治療には、胃の状態を確認するための胃カメラ検査が必須です。ある程度慢性胃炎が進行している場合、胃粘膜が分厚くなったり萎縮が起こります。さらに萎縮が進むと、胃の壁が薄くなり血管が透けて見えるようになります。萎縮した胃粘膜は元に戻せず、胃がんの発生原因にもなります。そのため、慢性胃炎は早期に治療をすることが重要です。治療方法は、慢性胃炎の原因がピロリ菌であれば、除菌治療をします。除菌治療は、抗菌薬と胃酸の分泌を抑える薬を1週間服用するだけでよく、除菌の成功率は70%程度です。除菌治療の6週間後以降に除菌が成功したかを確認する検査(尿素呼気試験)を行い、失敗した場合には、別の抗菌薬を用いて2回目の除菌治療を行います。2回の除菌治療を受けた方のほとんどはピロリ菌の除菌に成功します。