切れ痔とは
切れ痔(裂肛)とは、肛門の皮膚が切れたり、裂けたりしてできた傷のことです。主な症状は排便時の痛みや出血ですが、いぼ痔のように大量に出血することはまれで、通常はトイレットペーパーに血が付着する程度です。
見張りイボ(お尻のいぼ)とは?
見張りイボとは、切れ痔が慢性化して炎症を繰り返すと、肛門の裂け目の周辺の皮膚が盛り上がって「イボ」のようになる状態のことです。見張りイボ自体は皮膚のふくらみであるため害はありませんが、塗り薬による保存的な治療を行うのが一般的です。また、イボの大きさによっては手術を行う場合があります。
切れ痔の原因
切れ痔の原因は、便秘や下痢です。便秘で硬くなったカチカチの便が排便時に肛門の皮膚を傷つけたり、下痢によって排便の勢いが増すことで肛門の皮膚が傷つき裂けます。また切れ痔の再発を繰り返すと、肛門ポリープや見張りイボを併発することがあります。切れ痔は一度治療しても、生活習慣や下痢、便秘が改善しないと再発します。なお、切れ痔は男性よりも女性に発症率が高く、その理由は過度なダイエットや運動不足、水不足であると考えられています。
切れ痔は痛い?
初期の症状
切れ痔の初期症状は主に、排便時の痛みと、排便後の少量の出血(トイレットペーパーに付着する程度)です。排便時の痛みはしばらくすると消えることが多いです。また、初期では痛みがない場合もあります。
慢性化したときの症状
切れ痔が慢性化すると、肛門が狭くなる、排便時の強い痛み、排便後の持続的な痛み、肛門にイボ状のふくらみ(ポリープ・見張りイボ)ができる、肛門に潰瘍ができるなどの症状があらわれます。肛門が狭くなると細い便が出るようになります。
切れ痔による血便の見分け方
切れ痔による血便の特徴は、便に付着した血液の色が鮮やかであることです。また、排便時に肛門の痛みを伴うことが多いです。
切れ痔による出血は何日続く?大腸がんとの見分け方は?
切れ痔による出血は通常4、5日で自然に止まります。また痔からの出血は、種類や状態により、トイレットペーパーに血が付着する程度から便器が真っ赤に染まるほどボタボタと垂れてくる程度まであります。一方大腸がんの場合だと、血が肛門から垂れてくるようなことはなく、大便や粘液に混ざる程度の出血があります。しかし、痔は大腸がんと同時に存在することもあるため注意が必要です。また大腸がんが痔と同時に存在している場合は、排便回数が1日5、6回に急に増えたり、残便感が残るようになったりします。
切れ痔の治し方
急性期
できたばかりの切れ痔の場合は、軟膏や内服薬を処方して傷の痛みや炎症を抑制する保存的治療を行います。急性期の切れ痔は比較的短期間で治癒しますが、再発しやすいため、治療と同時に再発防止のために食生活や排便習慣などの生活習慣の改善を行う必要があります。食生活の改善では、水分摂取や食物繊維の摂取、排便習慣の改善では、排便後トイレットペーパーで強くこすらないこと、温水洗浄便座やシャワーで肛門を清潔に保つこと、肛門を冷やさないことが重要です。肛門は温めることで、肛門括約筋という筋肉が緩み、痛みの緩和にもつながり、また血流が促進されるため傷の回復も早くなります。他にも、必要に応じて、緩下剤や整腸剤を用いて便通を改善します。
慢性期
切れ痔の発病と治癒が繰り返され、傷が深く、潰瘍化した状態の切れ痔は手術治療が必要になることがあります。慢性化した切れ痔はだんだんと傷痕が大きくなり、肛門狭窄を引き起こします。肛門狭窄が起こると、便がより通りにくくなるため、肛門がより切れやすくなりとどんどんと悪化していきます。さらに進行すると肛門の筋肉がけいれんし激しい痛みを伴います。排便時の痛みの恐怖から食事が摂れなくなってしまう方もいます。便秘の改善やおしりに力を入れて排便するとう誤った排便法方法を改善することが重要ですが、慢性化し症状がひどい切れ痔は肛門括約筋を緩め、拡張する手術が必要になります。また、肛門ポリープや見張りイボができた場合も切除手術を行うことで改善します。
切れ痔の手術
用指肛門拡張術
用指肛門拡張術とは、肛門に局所麻酔をかけ、医師が指で肛門を広げ、肛門の緊張を緩める手術方法です。薬物療法を行っても排便時の痛みが改善しない場合に行われます。切らない手術方法なので、簡単で患者様の負担は小さい手術方法ですが、他の手術方法と比べると再発率は高くなります。
側方内括約筋切開術(LSIS)
側方内括約筋切開術とは、側方内括約筋の一部を切開することで、肛門括約筋の過度な緊張を緩めます。肛門ポリープや見張りイボがない場合で、肛門拡張が目的の場合には最も有効な手術方法です。
肛門周辺(余剰)皮膚切除術・肛門ポリープ切除
肛門周辺(余剰)皮膚切開術・肛門ポリープ切除とは、切れ痔を繰り返して深くなった傷痕や肛門の潰瘍を切除する手術です。肛門ポリープや見張りイボを伴う場合は、ともに切除します。
切れ痔繰り返す?
初期の切れ痔は薬物療法で治ります。しかし、薬物治療後も生活習慣を改善し、切れ痔が起こる原因を改善しない限りは再発を繰り返します。再発を繰り返すと症状が悪化したり、肛門ポリープや見張りイボを併発し、手術が必要になる場合があります。